■ 『中国人と日本人』 日本人は職人、中国人は商人   (2021.6.14)



天安門広場では2021年7月1日、中国共産党 創立100周年の記念式典が行われるとのこと。
それにしても、中国のここ数十年の経済成長ぶり、世界における存在感の拡大はどうだろう。
すごいものだ。また先日は宇宙探索ロケットが火星への着陸に成功した。科学分野でも先頭を走っているのが明らかだ。

一方、気になるのが、このところの覇権主義的な行動だ。尖閣諸島の領海侵入とか、香港への強権発動とか。
習近平の顔は見たくもないのだが、庶民の素顔はどんなんだろうと知りたい。
ずいぶん前に読んだものだが、邱永漢さんの著書『中国人と日本人』を思い出し、再読してみた。もちろん時代背景は90年代のものだ。



邱永漢さん(1924-2012)は台湾生まれ。父は台湾から移住してきた中国人、母は九州の日本人。台湾で広く事業を展開していた「経済人」である。
「わたしは双方のふところの中で育った」、「日本人に中国人を理解してもらうだけでなく、中国人に日本人を理解をしてもらう必要を感じて筆をとった」という。

中国人には中華思想がこびりついている
日本人は自分らが師と仰ぐに足る実力を備えた国もしくは人に対しては、「三尺離れて師の影を踏まず」といった敬虔な態度をとる。
反対に自分らよりランクが下とわかったら、掌をかえしたように横柄な態度に出る。
中国人にはそういうとことがない。頭が低いからではない。むしろ自分らこそ世界の文明文化の中心に位置しているという中華思想が頭にこびりついていて、
人に学ぶという謙虚さに欠けているからである。

日本人は職人、中国人は商人
 中国人は商人的性格の持ち主、日本人は職人気質の持ち主ととらえる視点がある。
職人は自分の仕事とか仕事の出来栄えに一家言を持っているが、それ以外のことについてはほとんど意見を吐かない。職人だから出しゃばらない。
仕事の上ではよく勉強する。研究熱心でもある。同業者のやっていることにはふだんから気をつけているし、これはいいと思えばすぐにも取り入れる。
会社の金儲けのために応用する。
 中国人は根っからの商人だから、物をつくっている時でも、物を売っているつもりで物をつくる。
だから儲かるとわかれば、わぁっと集まって有り金をごっそり注ぎ込んで盛大に生産をするが、儲からなくなった途端に工場も閉めてしまう。

生き残り作戦では中国人は日本人よりずっとしぶとい
中国人が能力面で日本人に劣ることはない。チーム・ワークという点では、日本人のようにはとても行動できないが、もし一対一で個人能力のテストをしたら、
多分中国人のほうがずっと上だろうと思う。とりわけ中国人はきびしい環境を生き抜いてきたので、生き残り作戦ということになったら、日本人よりずっとしぶとい。
貧乏に耐える忍耐力とか、手間ひまをいとわない勤労意欲とか、環境の変化に対する適応力とかいうことになったら、日本人は中国人の比ではないだろう。

日本人は怠け者になっていないか
ケ小平が自由市場を容認して、政府に納入すべき数量をオーバーした農産物は自由に処分してよろしいということになったので、農民の生産意欲が一挙に盛り上がり、
わずか十年あまりで、世界最大の人口を養うための食糧が一応自給されるようになった。少しでもお金になるように農民が賢明の努力をしている光景は随所に見られる。

巨竜はようやく雲に乗りはじめた
おそらくケ小平はこの日の来ることを心ひそかに待っていたに違いない。12億(当時)の人々を納得させるためにケ小平はテスト・プラントをあちこちに設け、
長い歳月をかけて実験をし、その結果を人々に見せた。そして、すべての中国人が「開放政策以外に中国の経済を発展させる道がない」ことをハッキリ認識したのだ。
日本の力を借りなくとも中国の経済がすでに成長に向かってテイク・オフしていることの認識が必要である。


◆ 『中国人と日本人』 邱永漢、(きゅう・えいかん)、中公文庫、1996/2
(原著は中央公論社から1993年/3月の刊行)

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