■ 新国立 R・シュトラウス 《ばらの騎士》 ウィーンの香りが (2007.6.15)

どこからかウィーンの香りが漂ってくるような(行ったことはないけど)、なにか上等のワインを味わったような(飲んだことはないけど)、充実した舞台だったと思う。休憩を入れると4時間の長丁場でしたが、あっという間でした。2007.6.15(金)




歌手陣が飛び切りではないけど粒選りだったのが勝因ではないだろうか。元帥夫人、オックス男爵、オクタヴィアン、ゾフィーともども。元帥夫人ニールントは凛とした声の張り、オックスのローゼは場数を感じさせる余裕のある演技、ゾフィーのサラは可憐でした。オクタヴィアンのツィトコーワにはブラボーを呈しました。脇役陣もスキがなかったのでは。


第2幕、オクタヴィアンとゾフィーがそれぞれの愛を深める場面。いかにも若々しくて瑞々しい歌いぶりではなかったでしょうか。1幕の黄昏感から2幕の新しい世代への転換を感じさせる。

冒頭のホルンを聞いたときにはアンサンブルもグズグズで、オケは今日はハズレかなと思ったものです。第2幕のオックス男爵のワルツなんか意外とやりました。このへんからオケもまとまった響きを出すようになったのではないでしょうか。でもホルンなんか、ここぞという危うい箇所では期待通りコケル場面もあったようだ。終幕は頑張りましたが。

それにしてもR・シュトラウスの音楽は大変だ。素人が聞いても、これを演奏するのは技術的にも音楽的にも難しいと思う。一瞬のうちに表情がひらりヒラリと入れ替わる。静から動へ、陽から陰へ、愛から憎へ。心理的な表情付けも高度にテクニカルである。比較的ゆっくり目のテンポの箇所では東フィルは健闘したとのではないか。テンポも柔軟に変化するので追従するのが大変。

第1幕の寝室のセットはなぜか安っぽい雰囲気。第2幕は一転してクリアな印象。遠近を強調した室内セットで赤・金の配色が豪華感がありました。そして第3幕の猥雑なセット。演出の流れとマッチして良い舞台でした。

元帥夫人:カミッラ・ニールント
オックス男爵:ペーター・ローゼ
オクタヴィアン:エレナ・ツィトコーワ
ファーニナル:ゲオルグ・ティッヒ
ゾフィー:オフェリア・サラ

指揮:ペーター・シュナイダー
演出:ジョナサン・ミラー
合唱指揮:三澤洋史、合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


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